3. クラミジア
7. 尖圭コンジローマ
8. トリコモナス
性感染症とは、性交渉によって感染する病気の総称です。性器の接触だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスによって、性器以外にも感染します。
原因となる病原体は細菌、ウイルス、原虫(微生物)です。どの病気を調べるかによって、検査方法を選択します。
性感染症は、初期には症状がなく知らない間にパートナーに感染させる可能性があります。
性感染症の種類に応じて以下の検査をおこないます。
性感染症の主な種類は8種類あります。このページでは、クラミジア、ヘルペス、カンジダ、淋菌、尖圭コンジローマ、トリコモナス、梅毒、エイズについて説明します。
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クラミジアとは、クラミジア・トラコマティスという細菌が感染して起こる性感染症です。自覚症状がない場合も多く治療する機会が乏しいため、無自覚・無症状のうちに感染源となり、日本では最も多い感染症です。
クラミジアの感染経路は、性交渉、オーラルセックス、アナルセックスです。近年では、オーラルセックスが一般的になり、のどへの感染が増えています。また、オーラルセックスしか経験のない場合でも、膣への感染も認められます。分娩時に感染があれば、出産の際に赤ちゃんへも感染します。お風呂や温泉での感染は報告されていません。
感染後1~3週間の潜伏期間を経て、子宮頸管炎は発症します。子宮頸管炎を発症するとおりものが増えることがあり、そのほかには不正出血、下腹部痛、性交痛が現れることもあります。しかし、半数以上の人は自覚症状を感じていないとも言われてます。妊娠中にクラミジアに感染した場合には、流産・早産の原因にもなりえます。
女性の場合には、膣分泌物をPCR検査にて、細胞の遺伝子配列(RNA)を調べます。精度の高い検査のため感染後の症状が出る前でも診断可能です。咽頭の感染も認められることが多いため、うがい液のPCR検査にて咽頭検査もします。男性の場合は、尿道感染しますので尿検査にて確認します。
クラミジアは自然治癒しません。治療をしないまま放置した場合には、腹腔内に感染が広がり、不妊症や急激な下腹部痛に見舞われることもあります。
治療方法は、抗生物質のアジスロマイシン(ジスロマック)を1日1回のみ服用します。効かない場合には、クラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)を1日2回7日間服用します。治療の効果測定のために、3週間後に必ず検査します。
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ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス(1型または2型)の感染によって、性器に潰瘍または水疱ができる病気のことです。性器に感染すると知覚神経を伝わり、腰仙髄神経節と言われる腰の神経などに潜伏感染し、再発を繰り返します。
ヘルペスの感染経路はウイルスが付いている部位の接触です。性交渉によって性器の粘膜だけでなく、おしりなどの皮膚にも感染します。オーラルセックスやキスによって感染すると、口唇ヘルペスといって唇に水疱ができます。お風呂では感染しませんが、タオルの共用、コップの回し飲みは傷を介して感染すると言われています。性器ヘルペスは出産時にウイルスが増殖すると、産まれてくる赤ちゃんにも感染します。
初めての感染の場合は、2日から10日の潜伏期間をおいて比較的突然に発症します。外陰部に水膨れや潰瘍ができ、38℃以上の発熱や頭痛を伴うことがあります。鼠径リンパ節の腫れや痛みを伴い、症状が強いため排尿時に痛みが出たり、歩行困難になったりすることもあります。
潜伏しているウイルスにより再発をした場合は、初めての感染の時よりも症状は軽くなる傾向があります。病変の数は1~数個程度で、発熱やリンパ節の腫れもみられません。疲労や風邪、月経、性交渉が再発のきっかけになることが多いです。
ヘルペスと聞くと帯状疱疹を想像する人も多いと思いますが、帯状疱疹に結び付くウイルスは「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV9)」という、性器ヘルペスのウイルスとは別のウイルスです。
病変部分をこすり、専用キットで細胞を確認します。およそ15分で結果が出ます。病変部の細胞内にウイルス感染がないか、細胞診にてヘルペスウイルスを調べる方法をとる場合もあります。
抗ヘルペスウイルス薬の内服、軟膏、点滴があります。頻繁に再発を繰り返す場合には、1年間お薬を服用することで、再発の予防をします。
1年に3回以上の再発し症状を自分で判断できる場合には、予め薬を処方し、症状が出てから6時間以内に服用する方法も保険の適応になりました。これにより、病院に行けないときでも、症状が悪化する前に治療を開始することが可能になりました。
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カンジダとは、膣内の常在菌であるカビの一種が引き起こす感染症です。性交渉がなくても発症するため性感染症とは言えませんが、オリモノ異常として相談される一番多い疾患です。女性特有の疾患と言っていいほど日常的にみられますが、男性では少ないです。
他の性感染症と異なり、性交渉によってうつるのではなく、膣内のカンジダ菌のバランスが崩れることによって発症します。抗菌剤を使用した時に発症する例が多く、また、免疫力が低下した時にも発症しやすいです。
主な症状は、膣や外陰部のかゆみとおりものが増えることです。また、酒粕状、粥状、ヨーグルト状のおりものがみられますが、これは他の疾患でもみられることもあり、カンジダ特有の症状ではありません。性交渉によって感染する病気ではないため、潜伏期間という考え方はありません。
他にも口に症状がでたものを口腔カンジダ、おしりに症状がでたものを肛門カンジダと言いますが、婦人科では取り扱いません。
おりものを検査し、確認します。
かゆみの強い部分は塗り薬を塗ります。おりものの異常は抗真菌薬の腟錠を入れるか、もしくは抗真菌薬を内服します。症状が消失した時点で治癒と判定します。カンジダは性交渉経験のないお子さんにも発症しうるものであり、性感染症という扱いには一般にはしないことが多いです。
症状がなければ無処置にしておいても重大な問題にはなりません。そのため、症状が治まれば、治療効果判定のための検査もパートナーの追跡調査も行いません。
症状が軽い場合には、自然治癒することもあるかもしれませんが、気になる症状がある場合には受診して治療することをおすすめします。
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淋菌とは、淋菌による性感染症で、子宮頸管炎を起こします。女性では、クラミジアに次いで2番目に多い感染症です。
淋菌は日光、乾燥、温度変化に弱く、人の粘膜を離れると数時間で感染力を失います。したがって、感染経路は性交渉しかありません。最近は、オーラルセックスによる咽頭感染、アナルセックスによる直腸感染が増加し、無症状のまま感染を広げています。一回の性交渉による感染率は約30%です。分娩時の産道感染で新生児に感染することもあります。
淋菌の症状は、菌の感染による子宮頸管炎が原因で起こります。女性の場合はおよそ40%が無症状感染であるため、知らないうちに感染を広げます。オーラルセックスにより喉に感染した場合にも症状は出ません。
男性の場合は、感染後2~7日間の潜伏期間を経て、尿道炎を発症するため、排尿痛や尿道分泌物の増加がみられます。母子感染により、新生児の眼に感染した場合には、1~2日の潜伏期間を経て、結膜炎を起こします。
女性の場合には、膣分泌物をPCR検査にて、細胞の遺伝子配列(RNA)を調べます。精度の高い検査のため感染後の症状が出る前でも診断可能です。男性の場合は、尿道感染しますので尿検査にて確認します。咽頭の感染も認められることが多いため、うがい液のPCR検査にて咽頭検査もします。
自然治癒することはありませんので、感染が確定した場合には治療をします。淋菌の治療方法は、抗生物質のセフトリアキソン(ロセフィン)を点滴で投与します。治療期間は1日のみ1回で、時間は15分から30分です。
この治療方法は、同時に咽頭感染の治療も可能です。子宮頸管炎や女性生殖器感染症は、放置をすると不妊症や卵管妊娠の原因となるため、治療後に再検査をします。
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尖圭コンジローマとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染による性感染症で、性器周辺に腫瘍ができます。200種類ほどあるHPVの遺伝子タイプの中で、尖圭コンジローマの原因となるものは、HPV6型、HPV11型がおよそ9割を占めます。
性感染症の中で、ワクチン(ガーダシル・シルガード9)で予防ができる数少ない病気です。性活動が活発な10代から30代に多く発症しています。
尖圭コンジローマの感染経路は、性交渉や類似する性的接触による、皮膚や粘膜の小さな傷や子宮頸部からの侵入です。まれに両親や医療従事者の手指を介して幼児に感染し、発症することがあります。また分娩時の感染により、乳児が喉頭乳頭腫による呼吸器困難を発症する可能性も問題となっています。
感染後3週から8か月(平均2.8か月)の潜伏期間を経て発症します。初期症状は、ニワトリのトサカ状、カリフラワー状のイボです。女性では、大小陰唇、会陰、膣前庭、膣、子宮頸部や肛門、肛門内や尿道にも発症します。一般的に自覚症状はないですが、大きさや発生部位により、痛みやかゆみがみられることもあります。
典型的なトサカ状、カリフラワー状のイボが出来ている場合には、肉眼所見のみで診断は可能です。ただし、診断が難しい場合は病変部の病理学的組織検査から診断をする場合もあります。典型的なイボが出来ている場合には、セルフチェックも可能ですが、治療が必要なため受診をおすすめします。
塗り薬が第一の選択肢です。塗り薬で改善されない場合には、切除することを検討します。治療をしないまま放置をした場合には、イボの数が増加し、病変の範囲が広がります。治療によって、イボが消えたとしても周囲に感染している可能性があり、3か月以内におよそ25%が再発します。最低3か月はフォローアップします。
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膣トリコモナス原虫(微生物)が、膣、子宮頸管内、下部尿路に感染して起こる病気です。また、他の性感染症と異なり、幅広い年齢層にみられることが特徴です。
トリコモナスの感染経路は、主に性交渉です。しかし、原虫(微生物)が感染の原因であるため、下着やタオルからの感染や、検診台、お風呂を通じた感染も知られています。性交渉のない女性や幼児でも感染がみられることがあります。
女性の20%~50%は症状がないといわれています。そのうち1/3の人は、6か月以内に症状が出ます。性交渉だけが感染経路でないため、潜伏期間ははっきりしません。トリコモナスの症状は、泡状で悪臭の強いおりものの増加、外陰、膣の刺激感、強いかゆみです。膣炎がおこることでこれらの症状がでます。
通常、女性の膣内は酸性に傾いており、菌の侵入や繁殖を防ぎます。しかし、妊娠中や月経中はアルカリ性に傾くため、菌の侵入や増殖がしやすい状態になります。このために、妊娠中や月経中は感染しやすく、増殖しやすいです。トリコモナスの増殖する環境は、他の細菌感染も助長します。トリコモナスに感染した時には、クラミジア、淋菌の感染も疑われます。男性の場合には、自覚症状がほとんどないため、無症状のうちに女性に感染させるので注意しましょう。
おりものが増える性感染症では、カンジダもあります。カンジダのおりもの症状は、酒粕状、粥状、ヨーグルト状と、トリコモナスとは異なる症状です。
参考:Personal Health Center
おりものを採取し、確認します。
菌を殺すメトロニダゾール(フラジール)を1日2回、10日間服用します。治療効果の判定は、症状の消失と、月経時に検査をします。トリコモナスは自然治癒しません。子宮頸管にも侵入することから、放置すると、子宮頸管に炎症がおこり不妊症の原因になります。
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梅毒とは、梅毒トレポネーマという細菌による感染症です。近年、女性では20代から30代の感染が急増しています。早期にお薬を服用することで完治しますが、治療しなければ全身に炎症が起こり、脳や心臓に重大な病気が起こることがあります。無症状でも感染するため、心当たりのある方は検査を受けましょう。
梅毒トレポネーマという細菌が、粘膜や皮膚の小さな傷から感染して起こります。感染経路としては性交渉が主ですが、オーラルセックスやアナルセックスによっても感染します。一回の性交渉での感染率はおよそ30%と言われています。妊娠中のお母さんからお腹の赤ちゃんへの感染もあります。
梅毒は、感染後10日~90日の潜伏期間があります。初期の症状は、感染した部位に初期硬結が起こることによる、性器や肛門のしこりや口内炎です。また、股の付け根のリンパ節が腫れることもあります。治療をしなくても症状は軽快しますが、治ったわけではないため他人に感染させます。
治療をしないで数か月経過をすると、体内で増殖した病変は血液によって全身に広がり、手の平や足の裏に発疹ができます。小さなバラの花に似ていることから「バラ疹」と呼ばれます。軽快したり再発を繰り返しますが、症状がないからと言って治ったわけではありません。
感染後治療をしないで数年経過した場合は、心臓の血管、脳、骨の様々な部位に病変が広がります。また、ゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘍が全身にでき、鼻にできると鞍鼻と呼ばれる鼻がくぼんだ状態になります。近年では早期に治療をするため、この様な症状が出ることはほとんどありません。
血液検査にて抗体を調べます。感染してすぐには正しい結果が出ないことがあるため、感染を疑われた時期から1か月程度の期間を空けて検査をします。
抗菌薬としてペニシリン系の抗生物質を4週間服用します。早期梅毒の場合は、症状が軽快し血液検査の数値が低下傾向にあれば完治としますが、1年程度はフォローアップします。治療をせず放置をした場合でも、しこりや口内炎などの症状はなくなりますが、自然治癒することは決してない病気です。治療が遅れれば治療期間も長くなるため、早期に発見し治療を開始することが重要です。
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エイズとは後天性免疫不全症候群の総称です。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し免疫機能が低下することによって、健康であれば自己の免疫によって発症しない病気を発症した状態のことです。指標となる疾患が23あり、そのいずれかを発症していなければ、エイズとは言いません。
患者数は2013年の484件をピークとして減少傾向にあります。感染率は、コンドームをしないセックス、オーラルセックス、アナルセックスではおよそ0.1%から1%です。出産に伴う出血や母乳により、子どもにも感染します。その場合の感染率はおよそ30%です。帝王切開で出産する場合には、感染率を2%まで下げることができます。
日本では、ブライダルチェックや妊娠初期の血液検査でHIVの感染の有無を確認します。
エイズの主な感染経路は3つです。
HIVに感染したとしても、すぐに症状が現れるわけではありません。感染後2~4週間でHIVは体内で増殖し、CDリンパ球を破壊します。この時期に発熱・のどの痛み・だるさ・下痢など、風邪やインフルエンザに似た症状から、筋肉痛や皮膚に発疹が出ることがありますが、多くの人は無症状です。この時期の症状は、数日から数週間でなくなります。
その後、症状のないまま、数年の潜伏期間があります。しかし、症状のない間にもCDリンパ球は破壊され、免疫力が低下していきます。そして、免疫が低下したことによって、指標となる病気が発症した状態がエイズです。
免疫力の低下が進み末期の状態になると、健康な人であれば免疫の力で防ぐことのできる菌やウイルスが血液や脳へ侵入します。すると、HIV脳症またはエイズ脳症といわれる状態になり、死に至ります。しかし、現在は治療が確立し、HIVに感染していない人と同様の経過をたどるようになったため、末期の状態になることはまれです。
血液検査でHIV抗体を確認します。感染後2~8週で血液の中にHIV抗体ができるため、心当たりがあるタイミングから、3か月以上経過した後に検査をします。
参考:厚生労働省「特集 守りたい、自分自身と大事な人の未来 エイズ・性感染症を正しく知る」
HIVの増殖を抑える薬を服用します。これによって、エイズの進行を食い止めることができるようになりました。エイズ=死の病ではなく、長期的に付き合いながら生きる慢性疾患と考えられるようになってきたということです。しかし、HIVを駆逐するためには、少なくとも数十年の治療が必要と考えられており、事実上完治は困難です。
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性感染症検査も症状があり、病院で検査をする場合には、保険適用となります。
このような症状がある場合には、保険適用の対象となります。
症状によって、検査の内容は異なりますが、およそ3,000円から15,000円程度の範囲となります。
性感染症の予防には、感染を広げないことと感染の原因となる病原菌を体内に入れないことが重要です。
無症状の場合も多いため、不特定多数とのセックスは知らないうちに感染を広げることになります。パートナーが変わった、不特定多数の人と性的接触があるなどの場合には、検査を受けることも重要です。
コンドームを正しく使用することで、病原体が体内に入るリスクを減らすことができます。オーラルセックスを目的とした咽頭用のコンドームも市販されています。safe sexを心がけることが大切です。
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